尾道市千光寺山の山頂に建つ展望台の建て替え計画。かつて山頂には市民に愛されてきた丸い展望台が建っていた。2018年のプロポーザル時の提案は、山頂エリアの敷地西側に位置するロープウェイ駅から、東側に建つ丸い既存展望台にむかって橋を架ける、というものだった。東西に伸びる橋の南には尾道水道と瀬戸内のしまなみが広がり、橋を渡るというその移動時間さえも魅力的なものに思えたが、実際に既存展望台を保存改修することは難しく取り壊さざるを得なかった。そうして行き先を失った東西に架かる移動空間である橋だったが、行き先を失ってもなお美しい眺望を前提に、それそのものが展望台として計画されることは自然な成り行きとなった。
訪れる人々は、急な坂道を徒歩で登るか、ロープウェイで山頂まで直接アクセスする。坂道を登ってきた歩行者は景色を眺めながら坂の延長のようなゆるい階段を登り、ロープウェイの乗客は降車後エレベータに乗ることで坂道を登ることなく、直接展望台を訪れることが可能となった。幼稚園や小学生の頃に坂道を登って遠足で訪れたという高齢の方が、ロープウェイに乗ってまた思い出の場所にやってくることができる。だれでもが様々な方法で山頂にアクセスし眺めを共有することは、平地のない尾道ならではの切実な願いだった。このように様々な経路を千光寺山の「樹上に浮かす」という極めて単純にも思える操作により、展望台すなわちその歩行体験によって山頂の既存環境そのものを少しばかり更新することを目指した。
意匠設計:AS(青木淳建築計画事務所より改組)
構造設計:金箱構造設計事務所
設備設計:森村設計
ランドスケープデザイン:ヒュマス
サイン:菊地敦己事務所
照明:YAMAGIWA
施工:大成建設
写真:阿野太一、石原愛美
設計期間:2018年6月〜2020年9月
施工期間:2021年1月〜2022年3月
備考:AS在籍時の主担当作品
掲載紙:
GA JAPAN 176 地方の建築(家)
新建築2022年6月号
日経アーキ2022年6月23日号
カーサブルータス特別編集 建築を巡る旅
GA JAPAN 182 百の納まり